ビジネスポート竹ノ塚
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中国にも「道路交通安全法(Road Traffic Safety Law)」があります。この法律は、「道路交通法実施条例」「交通事故処理手続き規定」や「自動車運転免許証申請受領・使用規定」などとともに、2004年5月に施行され、その後幾たびかの改訂を経て、今日に至っています。民事上の責任(いくら賠償しなければならないか)、刑事上の責任(どんな刑罰を受けないといけないか)と行政上の責任(例えばどのくらいの期間、免許停止になるか)が、2004年5月に一斉に明確になったわけです。
また、2011年には自動車の酒気帯び運転を「危険運転罪」にすると規定した「刑法改正案」の施行され、「道路交通安全法」も改正されました。この効果で、2012の酒気帯び運転は約4割減少しました。(それでも依然として、酒気帯び運転の検挙数は日本の200倍程度の水準です。)
この中国の道路交通安全法は、日本や欧米の安全先進国の法律に比較すれば、まだまだ大きな違いはあるものの、次の点において、画期的な変化をもたらした法律であると私は考えています。
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中国で自動車事故に遭った時の賠償額算定は、「道路交通安全法」ならびに「民法通則」、および最高人民法院の「民事不法行為による精神損害賠償責任の確定に関する若干の問題の解釈」と「人身損害賠償事件の審理にあたって適用される法律に関する若干の問題の解釈」という二つの司法解釈です。なお、中国の最高人民法院の司法解釈は法律と同じ効力を有するものです。
これらに基づいて、自動車事故における損害賠償の範囲とその算定方法を説明します。
・事案を受理した法院所在地の平均的な生活水準
項目 | 司法解釈の概要 | 備考 |
精神損害 撫慰金 |
被害者または死者の近親者が精神損害を被り、賠償権利者が人民法院に対して精神損害撫慰金の賠償を請求する場合、最高人民法院『民事不法行為における精神損害賠償責任を確定する若干の問題に関する解釈』を適用して確定する。 | 実質的に「慰謝料」と同じ。(※1) |
医療費 | 医療機関が発行した医薬費、入院費等の領収書に基づき、カルテおよび診断証明等の関連する証拠と結びつけて確定する。賠償義務者は治療の必要性および合理性に対して異議がある場合、相応する挙証責任を負わなければならない。 | 但し、日系クリニックや外資系病院での治療費は対象外になることが多い。 |
休業損失 | 被害者の休業期間および収入の状況に基づき確定する。 休業期間は被害者が治療を受けた医療機関が発行した証明に基づいて確定する。被害者に怪我による障害が生じ休業が継続する場合、休業期間は障害が固定する前日まで計算することができる。 収入の状況については、被害者に固定収入がある場合、休業損失は実際に減少した収入に基づき計算する。被害者に固定収入がない場合、直近3年の平均収入に基づき計算する。被害者が直近3年の平均収入の状況を証明できない場合、訴訟を受理した法院所在地の同等または類似する業界の前年度の労働者平均給与に基づき計算することができる。 |
収入とは税金等を控除した可処分所得である。 |
看護費 | 看護にあたった者の収入状況および看護人数、看護期間に基づき確定する。 看護にあたった者に収入がある場合、休業損失の規定を参照して計算する。看護にあたった者に収入がないまたは看護する者を雇用した場合、現地の看護業者が同等クラスの看護に従事した場合の労務報酬基準を参照して計算する。看護要員は原則として1名とするが、医療機構または鑑定機構に明確な意見がある場合、それを参照して看護要員の人数を確定することができる。 看護期間は被害者が生活自助能力を回復するまで計算しなければならない。被害者が障害により生活自助能力を回復することができない場合、その年齢、健康状況等の要素に基づき合理的な看護期間を確定することができるが、ただし最長でも20年を超えることができない。 被害者の障害固定後の看護については、その看護への依頼の程度に基づくとともに、障害補助器具の手配の状況と関連付けて要看護度を確定する。 |
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交通費 | 被害者およびその必要とする付き添い要員が診療・治療または転院治療により実際に発生した費用に基づいて算出する。交通費は正式な領収書に基づかなければならない。 | |
入院時の 食事補助費 |
現地国家機関の一般勤務要員の出張時の食事補助基準を参照して確定することができる。 | |
栄養費 | 被害者の怪我の状況にもとづいて医療機関の意見を参照して確定する。 | |
後遺障害 賠償金 |
被害者が喪失した労働能力の程度または障害等級に基づき、訴訟を受理した法院所在地の前年度の都市部住民一人あたりの可処分所得または農村部住民の一人あたり純収入に基づき、障害が固定した日から起算して20年で計算する。ただし満60歳以上の場合、年齢が1歳増加する毎に1年減少する。満75歳以上の場合、5年で計算する。 被害者に障害が残っても実際の収入が減少しない場合、または障害等級が比較的軽いものの職業上の障碍が惹起されその労働就業に重大な影響を与える場合、障害賠償金に対して相応の調整を行うことができる。 |
実収入に基づく計算になっていないことに注意が必要。 |
障害 補助器具費 |
一般に適用される器具の合理的な費用基準に基づき計算する。障害の状況から特別な必要がある場合、補助器具作成機構の意見を参照して相応の合理的な費用基準を確定することができる。補助器具の更新周期および賠償期限も、作成機構の意見を参照して確定する。 | |
葬儀費 | 訴訟を受理した法院所在地の前年度の労働者平均月給に基づき、6 ヶ月分で計算する。 | |
被扶養者の 生活費 |
扶養者が喪失した労働能力の程度に基づき、訴訟を受理した法院所在地の前年度の都市部住民一人あたり消費支出および農村部住民一人あたり年間生活支出にもとづいて計算する。被扶養者が未成年者の場合、満18歳まで計算する。被扶養者に労働能力がなくかつその他に生活資金を確保できない場合、20年で計算する。ただし満60歳以上の場合、年齢が1歳増加する毎に1年減少する。満75歳以上の場合、5年で計算する。 被扶養者とは被害者が法に基づき扶養義務を負わなければならない未成年者または労働能力を喪失しかつその他に生活資金を確保できない成年の近親者を指す。被扶養者にさらにその他の扶養者が存在する場合、賠償義務者は被害者が法に基づき負担しなければならない部分のみを賠償する。被扶養者が数人存在する場合、年間賠償総額の累計は前年度の都市部住民一人あたり消費支出または農村部住民一人あたり年間生活消費支出額を超過しない。 |
実収入に基づく計算になっていないこと、ならびに被扶養者の範囲に注意が必要。 |
死亡賠償金 | 訴訟を受理した法院所在地の前年度の都市部住民一人あたりの可処分所得または農村部住民の一人あたり純収入に基づき、20年で計算する。ただし満60歳以上の場合、年齢が1歳増加する毎に1年減少する。満75歳以上の場合、5年で計算する | 実収入に基づく計算になっていないことに注意が必要。 |
収入調整 (※2) |
賠償権利者がその住所地または経常居住地20)の都市部住民一人あたり可処分所得または農村部住民一人あたり純収入が訴訟を受理した法院所在地の基準よりも高いことを証拠を示して証明した場合、障害賠償金または死亡賠償金はその住所地または経常居住地の関連する基準に基づいて計算することができる。 被扶養者の生活費の関連する計算基準について、前項の原則に基づき確定する。 |
但し、「外国人が被害者の場合の判例」にある通り、外国での収入では計算されていない。 (※3) |
広東省高級人民法院広東省公安庁 「道路交通安全法施行後の道路交通事故 案件処理に関する若干問題に関する規定」 (04/12/17) |
外国人の人身損害賠償額は、都市部住民一人あたりの可処分所得に従う。 |
上海市高級人民法院「交通事故損害賠償案件の審理に関する若干問題への回答」 (05/12/31) |
訴訟を受理した法院所在地における都市部住民一人あたりの可処分所得に従う。なぜなら、我が国はなお発展途上国であり、先進国との収入差は大きい。外国での収入に従うとすれば、賠償額が高額となっておよそ我が国民の負担能力を超え、結局裁判所の判決が紙切れになりかねず、被害者の実質的な保護にならない。 |
都市部住民 一人あたりの可処分所得(元/年) |
農村部住民の 一人あたり純収入(元/年) |
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上海市 | 40,188 | 17,401 |
北京市 | 36,469 | 16,476 |
深?市 | 25,864 | - |
重慶市 | 22,968 | 7,387.27 |
浙江省 | 20,437 | 9,644 |
四川省 | 20,307 | 7,001 |
江蘇省 | 18,825 | 12,202 |
広東省 | 13,627 | 4,365.87 |